雇用調整助成金について
政府は経済への影響を3月の状況を見た上で緊急事態宣言を4月に発動し、5月下旬にこれを解除。また、新型コロナウイルスの雇用調整助成金では雇用維持を最優先した形で、特例変更を早期に実施。第2次補正予算では助成額の引き上げを実施しています。
一方、緊急事態宣言は諸外国とは違い都市間の交通遮断や都市閉鎖(ロックダウン)はなく、罰則を伴うような外出禁止措置もありませんでした。
他方、実体経済への影響は甚大で企業経営に(雇用を含む)相当なインパクトを与えています。これまで「シンクタンク岡事務所」はリーマンショックや東日本大震災の影響を受けた企業経営を内外からサポートしてきましたが、このまま新型コロナウイルスの影響が長く続くとなると、多くの職場(雇用)がなくなる可能性も否定できません。
1 休業の責任はどこにあるのか
感染拡大を防止するために店を開きたくても開けない状態。スタッフからすると働きたくても働けない状態です。また、休業要請や営業自粛との関係についても気になるところでしょう。新型コロナウイルスで休業した場合の休業責任はどこ(誰)にあるでしょうか。
感染拡大の防止を受けて営業自粛した場合や労働者本人の自由意思による休業、また家族が罹患した場合の取り扱いなどもあります。これらについては労働基準法(労基法)にある「使用者の責めに帰すべき事由」に該当するかで考えます。自己の自由意思による休みなのか、出勤停止による休みなのかで、休業手当の支払いの有無も変わってきます。労働者の責めに帰すべき事由であれば、ノーワークノーペイです。
労基法上の使用者の責任は外的要因の範囲、地域の状況、雇用維持(解雇回避)などの企業対応で考えられ、どこまで手を尽くしたかは所轄の労基署で判断されることになります。例えばテナントとして入っているモールなどの休館に伴う休業は、ほかの就業場所があるかどうかといった視点や他業務への異動などの視点があります。
一方、賃金は生活給で契約は対等であることから、強行法規の労基法では使用者の責めに帰すべき休業に対し6割以上の支払いを規定し、労使間の契約に介入(労働基準監督官による是正勧告や指導)することで、この即座の実行を担保させています。労基署は、その地域や業態の「休業要請や休業命令」を勘案し、対象事業所が就業させることができない状態(対象労働者が就業できない状態)かどうか、総合的に判断します。
解雇回避努力については、今後、雇用調整助成金の申請を検討したかどうかも、論点になっていくでしょう。
2 雇用調整助成金(雇調金)とは
雇調金はコロナで休業を余儀なくされた会社に勤める従業員に支給した休業手当の一部を補助する助成金です。これは、労基法の休業手当(平均賃金の6割以上)の支払いが前提となります。休業手当の支払いは、使用者の責めに帰すべき事由によって労働者が休むことになった場合に使用者が支払うものになります。ただ、今回の新型コロナは使用者の責めに帰すべき事由ではありませんが、これに準じた取り扱いとして助成することになっています。本来は計画書を出し休業する日が対象となりますが、コロナに限っては、特例で計画書の事後提出が認められています。
◆休業日について
雇調金では所定労働日数や休業日、公休日を明確にする必要があります。
休業となる日は労働日に限られます。労働日とは就労義務のある日です。シフト勤務となっている事業所は各人の就労義務日が労働日ということになります。そして、その労働日に休ませることにした場合は休業となります。よって、公休日は休業日とはなりません。所定労働日数とは会社が就業規則や会社カレンダー、勤務予定表などで定めた日数になります。
◆休業手当について
労基法(第26条)の休業手当は、平均賃金(第12条)から求めるのですが、雇調金では各人の金額のチェックで使用します。月給者の平均賃金は、直近3カ月に支払った賃金総額(残業代など全て含める)をその総日数で割った日額となります(時給者パートの場合は、上記日額と賃金総額を日数で割った額の100分の60と比べて高い方の額)。「給与で休業手当」として支給する場合は休業協定等で定めた支払い率となります。よって、「労基法の休業手当」と「給与で支給する休業手当」は別のものになります。
3 休業した際の給与明細
次は、雇調金の申請に添付する賃金台帳や給与明細書についてです。給与計算では、次の3通りの計算方法があります。
① 月の給与額÷その月の所定労働日数×休業または労働日数
② 月の給与額÷月平均所定労働日数×休業または労働日数
③ 月の給与額÷歴日数×休業期間または出勤期間
労基法上は所定労働日数と歴日数を混在させて計算してはいけないことになっています。そのため、月の給与額を歴日数で除して実勤務日数を乗じるやり方は誤りになります。また、労基法の平均賃金では各手当を全て含めて計算することになります。よって、雇調金の休業手当を払う上では、いったん労基法上の平均賃金から算出した労基法上の休業手当の額を求めて、労使間で締結する協定額(支払い率)が当該額を下回っていないかチェックしておく必要があります。
雇調金の申請では休業日数を記載しますが、給与計算については各事業所が任意にその計算方法を決定するため、どの計算方法を使ったら良いのか迷うことがあります。休業協定で支払い率を100%として支給する場合はあまり問題にならないのですが、支払い率を60%にすると、労基法の休業手当を下回る可能性があるため注意が必要です。
雇調金申請に当たっては休業日数を申請し、併せて当該日に支払われた休業手当の額を確認します。そのため、月の給与額から欠勤控除し当該日について休業手当を支給するのか、月の給与額を日割りし、休業手当と分けて支給するのか決めておく必要があります。
なお、欠勤控除計算と休業手当支給計算についてはその分母は一致した方が良いというのはいうまでもありません。
給与計算や給与明細書への記載方法については、シンクタンク岡事務所へお問い合わせください。

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